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田原総一郎著 ドキュメント東京電力―福島原発誕生の内幕 (文春文庫) [本の話]

ドキュメント東京電力―福島原発誕生の内幕 (文春文庫) 
                     を読みました。
著者はご存知、田原総一郎

田原総一郎さんといえば、今は、議論を掻き回す迷キャスターとして広く認識されていると思いますが、元は世間を騒がすジャーナリストでした。

この本は30年前に刊行されたルポルタージュ、「ドキュメント東京電力企画室(ちくま文庫) 」を、福島第一の事故を受け、改題して復刊されたものです。

日本がどのようにして原子力発電というものに踏み込み、東電、通産官僚、政治がその導入、発展にどう関わり戦ってきたかが、関係者への取材にもとづいてドキュメントタッチで描かれています。まさに今、タイムリーと言って良い内容。しかも面白い。今は「原子力ムラ」に代表されるように、官民一体となって利権をむざぼってきたという構図で、原子力事業への取り組みが理解されることが多いようですが、実際、コトの始まりはそうではなかったことが、本書ではよく理解できます。

電力会社側の実質的なリーダーであった当時の東電社長、木川田氏の「悪魔(原子力)と手を結ぶ」という言葉からは、彼は原子力を恐れ、本来は使ってはいけないものであるという認識を十分持っていたことが伺えます。

まだ、石油の枯渇など話題になっていない時代、もちろんCO2の増加に対する警鐘など影も形もない時代、そんな時代になぜ「悪魔(原子力)と手を結ぶ」決断をしたのか、しなければいけなかったのか・・

それは「悪魔」を、信用のおけない「官」に委ねてはいけないという彼の信念からでした。 

すでに「官」は「原子力」の開発を開始、しかし責任者が数年で入れ替わり、責任の所在が曖昧な「官」には将来を見越した運営は無理。そのことは、戦前、電力会社が全て国有化されたとき、石炭の入手すら満足に出来ず、結局は国民に負担を強いたという歴史が証明していると彼は考えるのです。

「官」の手に悪魔を渡さないようにするためには自ら「悪魔(原子力)と手を結ぶ」しかない。それが彼の決心だったようです。

しかし絶対の信頼をおいていたGE社の原子炉の不調、本国アメリカで明らかになった欠陥は彼の思惑を打ち砕きます。

そして国民に広がる原子力に対する、そして東電に対する不信感

それにつけこむ「官」の逆襲

太陽光発電に代表される自然エネルギー、分散型小型発電(原子炉ですが・・・)等の推進の裏にある思惑。

1970年代に・・・今考えるようなことはほとんど考えられていたんだ、議論されていたんだな・・・ということがわかります。記述にそれほど古さを感じないんですよね~。まさに歴史は繰り返す。

原子力導入への動きが始まったのは1950年代、実際に建設されたのも1560年代。田原氏が取材を開始した時点で、大きな役割を果たした元東電社長木川田氏をはじめすでに多くの方が鬼籍に入っていました。当時、彼らが腹のそこで何を考えていたのかについては、推し量るすべも無く、著者の推定がかなり入って物語風に仕上げられた部分もありそうです。それはあるにせよ、当時の様子がリアルに理解できる良書だと思います。

田原氏の本はこの他に「原子力戦争」と「誰もが書かなかった日本の戦争」を買い込んでおります・・・(^^;

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BlueRidgeWalker またの名を「富嶽仙人」のアメリカ南部生活記

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